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珠洲の話をしよう

奥能登フラム塾

Oku-Noto Fram cram school.

珠洲市の文化や産業をテーマに、 その分野で専門的なゲストをお招きし、北川フラム総合ディレクターと芸術祭を応援するサポーター、市民が一緒に、珠洲市の魅力を再発見することを試みます。

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第5回奥能登フラム塾
テーマ:「珪藻土」

今回のテーマは珪藻土。鍵主工業代表取締役社長の鍵主さん、能登燃焼器工業の舟場さんから、奥能登珠洲の珪藻土について話を伺いました。

珠洲の珪藻土

珪藻土は、水中で繁殖する藻の一種“珪藻”の殻が海や湖の底に堆積して化石化した堆積岩で、奥能登珠洲は全国屈指の埋蔵量を誇ります。
珪藻土は世界中どこでも一千万年前〜二千万年前に海底に堆積しているのですが、海底から隆起した際の天候によって風化具合に違いが生じるそう。珠洲の珪藻土は風化があまり進んでいないため、珪藻の殻の小孔が残り、多孔質になっていることから、他の産地に比べて断熱性や耐火性、成形性が高いことが特徴的だそうです。

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珪藻土製品は採掘方法によって二つに大別できます。
ひとつは切り出し製法。珠洲の珪藻土が固く締まっていて、塊のまま加工できること(=成形性)から現在も珠洲にだけ残る製法です。「岩切(いわきり)」と呼ばれる作業で、採掘路から珪藻土の塊を取り出す際、「平ノミ」で壁面を平にして格子状に線を引き、通称「鉄砲ノミ」で削るように塊を切り出します。 
もうひとつは、露天掘りによって採掘された珪藻土を粉砕し、プレス機で成形する練り製法。珪藻土はパサパサなので、そのまま成形することができず、練ることで粘り気を出した上で成形をするそうです。 切り出し製法はカービング(彫造)、練り製法はモデリング(塑造)と言えるかもしれません。 
珪藻土産業の歴史は長く、今回のフラム塾で紹介された江戸時代初期の文献によると、元々は個人用として製造されていたかまどや炉が北前船によって流通され、販路が拡大したそうです。他にも製塩遺跡の発掘調査で炉材に用いられたと考えられる焼けた珪藻土の塊が見つかったことから、千年以上前の平安時代から使われていた可能性もあり、古くから生活と密接に関わっていたことが感じられます。 
珪藻土製品が爆発的に普及したのは昭和に入ってからのこと。珪藻土の断熱性に着目した京都の学者が、能登半島で生産することに決め、和倉で愛知県の三州瓦の練り製法を使った珪藻土コンロ=七輪を作り始め、同じ頃に珠洲では切り出し製法による生産が始まったそうです。最盛期には数十社が生産していたものの、エネルギー革命によって日常生活用品としての七輪の需要は減少しました。

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珠洲の珪藻土産業

珠洲市の代表的産業だった珪藻土工業。現在珠洲では4社残っている。珪藻土七輪は生活の必需品として各家庭で使われてきた。

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切り出し製法

切り出し製法では何十種類ものノミを利用する。昭和39年当時の写真に「岩切道具」という文字が読み取られるため、古くから珠洲の鍛冶屋で珪藻土採掘のための商品が販売されていたことがわかる。

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練り製法

練り製法では七輪のほか、珪藻土レンガを作ることで、釜土やピザ窯などの大きい製品を作ることもできる。

最近は壁材や風呂マットとして日常生活でも見かけることも多い珪藻土製品ですが、意外なところでも活躍しています。例えば、ビールや清酒、薬の製造過程で不純物を取り除くための濾過助剤や輪島塗の下地に塗り込む地の粉、カーブミラーや車のガラスの様な球面を持つガラス製品の型枠としても使われています。
しかしながら、やはり珠洲の珪藻土と言えば七輪。『奥能登国際芸術祭2017』では、「炙りBAR」として、地元の七輪と炭、産物を移動式屋台で展開しました。珠洲の七輪がアメリカやオーストラリア、欧州各国に輸出されていることからも、みんなで七輪を囲んで、火で炙る食の楽しみが注目されているのかもしれません。 
最後に北川フラム塾長からは「珪藻土を多くの人に知ってもらうためには、エピソードが重要になるのではないか」という意見がありました。珠洲の珪藻土の優れた特徴に加えて、職人の皆さんが受け継ぐ中で生まれる物語も大事な財産にしていきたいですね。 

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珪藻土七輪

断熱性や耐火性が高い珪藻土は七輪に最適。珠洲では各家庭に一台珪藻土七輪を保有している家庭も少なくない。ケースと天板に九谷焼が施された珪藻土七輪も誕生している。

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炙りBAR

2017年の芸術祭では、珪藻土七輪と木炭を使い、炙りの楽しさを体験するイベントを展開した。

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見附島も珪藻土

島の形が軍艦に似ているところから別名「軍艦島」とも呼ばれる高さ28mの珠洲のシンボル見附島。見附島の側面も珪藻土。

奥能登フラム塾シリーズ

Oku-Noto Fram cram school.

第2回

珠洲のキリコ祭り


フラム塾第2回を読む。

第3回

能登杜氏


フラム塾第3回を読む。

第4回

珠洲の伝統建築、生活建築


フラム塾第4回を読む。

特別編

南極会談


フラム塾特別編を読む。

アートディレクター
1946年新潟県高田市(現上越市)生まれ。東京芸術大学卒業。  

主なプロデュースとして、現在のガウディブームの下地をつくった「アントニオ・ガウディ展」(1978­‐1979)、日本全国80校で開催された「子どものための版画展」(1980­‐1982)、全国194ヶ所38万人を動員し、アパルトヘイトに反対する動きを草の根的に展開した「アパルトヘイト否!国際美術展」(1988‐1990)等。  

地域づくりの実践として、「ファーレ立川アート計画」(1994/日本都市計画学会計画設計賞他受賞)、2000年にスタートした「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」(第7回オーライ!ニッポン大賞グランプリ〔内閣総理大臣賞〕他受賞)、「水都大阪」(2009)、「にいがた水と土の芸術祭2009」「瀬戸内国際芸術祭2010、2013、2016」(海洋立国推進功労者表彰受賞)等。