7月25日、金沢の北國新聞赤羽ホールで奥能登国際芸術祭のプレイベントが開かれました。500人の会場はほぼ満員、予想もしない入りでした。今年の芸術祭期間中に行われる、さいはての朗読劇「うつつ・ふる・すず」から、出演の常盤貴子さん、企画・音楽の阿部海太郎さん、そして泉谷満寿裕実行委員長(珠洲市長)の鼎談では、拍手がたびたび起きるほどのあたたかい会だったと報告しておきます。
金沢プレイベント、開場中の様子
震災で三週間延期した芸術祭でしたが、地域の復旧への動きも始まり、何とか頑張ろうという機運が高まり、周りからの応援もうれしく、まずは開催への準備が始まったと言えるでしょう。
鼎談の冒頭部分を上げます。
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市長:常盤貴子さん、そして阿部海太郎さん、お越しいただきましてありがとうございます。まずは常盤貴子さんですが、2015年のNHK連続テレビ小説「まれ」ですよね。塩田を舞台にしたドラマでしたが、その撮影の合間を縫って珠洲にお越しになられてて。第1回目の『奥能登国際芸術祭2017』の時には2泊3日で作品をコンプリートされたとお聞きしました。前回の『奥能登国際芸術祭2020+』にお越しいただいた際にも、テレビを通して「珠洲市は奇跡の街だ」とおっしゃっていただいて、すごく鳥肌がたった覚えがあります。そして今回も、地震後の5月29日に北國新聞のラッピング紙面の中に応援のメッセージを寄稿いただき、本当に、私も頑張ろうという気持ちになり元気が出ました。今年の第3回目の芸術祭については、どうですか?
常盤さん:とにかく楽しみですね。今まで見てきたものが常設で残っていることも楽しいですし、それが、いろいろ時間が経って自分の中身が変わっている部分もきっとあると思うので。芸術のいいところなんですけれども、自分の状態によってどう見えてくるかっていうのも変わってくると思うし、世の中の流れも変わってきて、またちょっと違う見方ができるのかなって。いま、その自分の内面にすごく興味が出てきてます。で、新しい展示もまたあると思うので、これはどんなふうに体験できるのかなっていう楽しみがあります。
トークイベントの様子
市長:ありがとうございます。そして、さいはての朗読劇に常盤貴子さんが出演されるということですし、その朗読劇の企画・音楽は阿部海太郎さんがなさっていただけるということです。昨年の秋に開催した、さいはての朗読劇「珠洲の夜の夢」。面白かったというか、あれも本当に素晴らしかったですね。地域の皆さんも参加されましてね。そこがまたすごく良かったなと思って。あの時、夜遅い上演でしたけれども、全国各地から皆さん駆けつけていただいたということもあって、いや本当に珠洲の時代が変わったなというふうに思いましたけど、今年の朗読劇についてはいかがですか?タイトルが「うつつ・ふる・すず」。まずこの意味合いは。
阿部さん:実はまだそんなに詳細が決まっていなくてこれからというか。準備稿はできていて、今回も、前回の「珠洲の夜の夢」を書いてくださった詩人の大崎清夏さん。東京で活動している若手の女性の詩人なんですけれども、大崎さんが、前回は珠洲にもともと伝わってる伝説や民話をベースに現代のお話を織り交ぜて、新しい物語を作ってくださり、今回は、今を生きる人たちをベースにつくってくださっている。実は地震の直前ぐらいに取材で一度来て、地震後に今年の開催どうなるんだろうっていうのがありましたけれども、やることに決まったということで、2回目の取材を大崎さんがしてくださって。その時に珠洲の方のお話を聞いて、今度は実際に生きてる方たちのお話が一つベースになりながら、それが珠洲の民話や伝説と時間が折り重なっていくっていう。そういった物語になりそうで、今まだその創作の過程ですね。
市長: うつつは、「夢かうつつか」のうつつですか。
阿部さん: そうですね。まあ、あの、来て本番見ていただくとわかるかなと(笑)。でも、これ大崎さんが言ってたんですけれども、全国の民話語りにもよくある形式で、「これは本当にあった話です」というような話の始め方があるんですね。今回もそういったことを一つのテーマにしながら、現実と想像の世界というのを、あの劇場空間の中で楽しんでいただくっていうことですね。
(左)阿部海太郎さん、(中央)常盤貴子さん、(右)泉谷実行委員長
市長:作曲家の阿部海太郎さん。スズ・シアター・ミュージアムの音楽も手掛けていただきましたし、昨年の「珠洲の夜の夢」の朗読劇でも、できるだけこの珠洲の素材を使って音を奏でるということをなさっていただきました。そして今、NHK連続テレビ小説「らんまん」の劇中の音楽も阿部海太郎さんが作曲、あるいは作曲だけじゃなく演奏もですよね。
阿部さん:そうですね。ピアノ、まあ、僕が弾ける楽器はいくつかあるんですけど、ピアノで何曲か全部ではないんですけれども、僕自身も演奏して。
市長:で、阿部海太郎さんと常盤貴子さんは、以前からいろいろと繋がりというか。
阿部さん:そうですね。前回の朗読劇をやらせてもらった時の演出が長塚圭史さんなんですけれども、長塚圭史さんとはもともと東京での舞台の仕事でご一緒していて、僕がすごく尊敬する演出家です。スズ・シアター・ミュージアムっていう場所がとにかく素敵で特別な空間なので、ここで何かやろうという時に、多分演出家が相当頭を悩ますと思うんですね。で、もう圭史さんしかいないなあっていうふうに思って。最初、圭史さんにお話しして、今回も圭史さんが演出家として参加してくださって。あそこのミュージアムで何か演劇的なことを実際にやろうという話を、美術作家の南条さんとお話していくなかで、どっか頭の中で、やっぱり珠洲にすごくご縁がある、常盤さんにいつか参加して頂けたら凄く嬉しいなあっていう気持ちはあったんですけど。でも、パートナー同士で仕事するっていうのはやりにくかったりするのかどうかなとか、色々探りながら(笑)。
常盤さん: あの、長塚というのは私の夫なんです。
阿部さん: でも、まずは昨年の1回目、おかげさまですごく好評で皆さん楽しんでいただけて。今回はたまたま、大崎さんもちょっと女性にスポットを当てたお話を書かれているということもあり、とにかく常盤さんにダメ元で相談したら「ぜひ」っておっしゃってくださったので、すごく嬉しいです。
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トークの続きは、また来週。
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