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市民総参加型プロジェクト

珠洲の大蔵ざらえ

Suzu Okurazarae

奥能登珠洲―能登半島の先端に位置し豊かな里山里海に囲まれたこの地はかつて、海運の結節点として多様な交易のある「最先端の地」でした。しかし現在では、高齢化率が50%を超え、おじいちゃん・おばあちゃんが一人で家を守り、空き家もちらほら。こうした家々の蔵には、代々残されていた民具や地域の財産が手つかずの状態になっているはずでは。

珠洲の大蔵ざらえプロジェクトは、そうした眠ったままの「地域の宝」を思い出や記憶とともに市内一円から集めて整理する地域の一大プロジェクトです。地域住民、サポーターらの協働で集められた道具たちは、専門家が調査、アーティストが作品へと「活用」―モノを主役とした劇場型民俗ミュージアムを開設すべく、現在準備を進めています。 

大蔵ざらえ日誌Vol.02 大谷 堂前家 / 2020.12.18

薬師堂の近くに暮らし、
約200年以上もの時が流れて来た堂前家の蔵に迫る。

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写真右:堂前美智子さん。1928年、姫路生まれ(現在92歳)。

堂前重仁さんは、堂前家の6代目。


堂前家の近くには、家と見間違えるような立派な薬師堂があり、薬師如来像が祀られている。寺とも神社とも見分けがつきにくい不思議な空間。「堂前」という珍しい苗字は、読んで字のごとくお堂の前からきているようだ。
美智子さんの亡くなった旦那さん、堂前重仁さんの先代は百姓で、先々代は船の仕事をしていたが、船が沈んで山や田んぼを売り払い、この家だけが残ったという。数代前は、この家で寺子屋をしていたことが珠洲市史(*1)にも記載されている。






*1:珠洲市史…珠洲のこれまでの歴史についてまとめられたもの。珠洲市史には、堂前 前二衛門氏の寺子屋が、天保二年に開業し明治四年まで続いたことが記されている。習字読書算術を学科としていたようだ。

「女学校を出たあと、自衛官として姫路で働いていた主人と知り合いました。そのあと一緒になって、長くても3年くらいでしょうか、転々と全国の官舎に住んで、主人が退官した昭和56年からここで暮らしています。この家には、古い神棚と仏壇があったので、とても気に入って。私が主人にこの家に住みましょうよって誘ったんです。古い物が好きですし。主人が、18年前(2002年)に他界してからは、ひとり暮らしです。ここから海に夕日が沈むところを見るのが好きで、それがなかったらたぶん…この家を出ていたかもしれない。今も毎朝海に向かって、手を合わしています。」

堂前家は、家の奥に2階建ての大きな蔵が1つある。そしてその蔵と隣接するように納屋がある。ご主人が亡くなられて、手が付けられずにいた蔵のことが、美智子さんにとってもずっと気がかりになっていたそうだ。

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2020年3月にプロジェクトが始まって以来、初のボランティアサポーター(市内在住者限定)を入れた収集活動。

いよいよ大蔵ざらえ。

大蔵ざらえ当日。事務局スタッフのほか、地元のボランティアサポーター、そしてこのプロジェクトに参加するアーティストも全国から集まった。その数総勢30名。美智子さんからは「今日はこんなに集まってもらって…。どうぞよろしくお願いいたします」と挨拶をいただき作業開始。

蔵や納屋の中には、昔使っていた炬燵布団や座布団、風呂敷、漬物樽や寿司桶、味噌を作るための桶、蒸籠の蓋、重箱、やかん、御膳を含む食器類、昔着ていた洋服やたくさんの端切れも出てきた。

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約200年前、天保時代の御膳。

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重仁さんがまとめた、堂前家の船について。

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重仁さんの父、堂前梅松さんが付けていたという日記帳。

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蔵の2階、段ボールの中から出て来た方位磁石。

特に印象的だったのは、亡くなった旦那さんが使っていた時計や、航空自衛隊のときに着ていた制服。
「主人のものはとくに捨てるにも捨てられなくて」と話す美智子さん。

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囲炉の鉄瓶に張られていた美智子さんの一句。

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美智子さんがこの家の中で、一番好きな物だという仏壇。

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堂前家で民具の収集作業を行う様子。

人から人へ、記憶をつむぐ民具。

「これはなんでしょうね」

長い間眠っていた民具たちを目の前に、美智子さんの記憶がゆっくりと紡ぎ出されていく。私たちはその記憶から「もの」の背景や家族に思いをはせる。

現在92歳の美智子さん。元気なうちにと、加賀と函館にいる息子さんから同居を誘われていて、近く引っ越しを考えているという。

「今日のこと、日記に書いておきますね。」

珠洲に来てから1日も欠かさずにつけているという日記には、どんなことが残されたのだろうか。 

大蔵ざらえは、このように行われます

情報入手!

事務局に、連絡が入ります。
「うちの蔵にも、昔のものが眠ったままだよ」
「おーい!うちにもあるよー」

下見

どのようなものが蔵にあるか、事務局が一度伺います。
蔵を拝見したり、お話を伺ったりします。

収集

民具の収集活動はサポーターと一緒に行います。
蔵の奥から、まだまだ出てくる。
時には用途が分からないものも?

聞き取り・調査・仕分け

収集後は、寄贈者の方に民具の思い出や、記憶の聞き取りを行います。
ご先祖の思い出話で涙ぐむ場面も...

活用!!

大谷保育所を始め保管をしている場所にアーティストを案内し、民具を見てもらいます。その後活用したアート作品に!

あなたの蔵にも大蔵ざらえがやってくる。

大蔵ざらえプロジェクトで発掘・活用されたお宝たちは、
奥能登国際芸術祭2020+ の作品プロジェクトのひとつとして、大谷地区・旧西部小学校体育館を舞台に公開されます。
ぜひご期待ください。

大蔵ざらえプロジェクト

総合ディレクター:北川フラム
キュレーション:南条嘉毅

参加アーティスト:大川友希、OBI、久野彩子、世界土協会、竹中美幸、南条嘉毅、橋本雅也、三宅砂織
歴史民俗学アドバイザー:川村清志(国立歴史民俗博物館) 
会場空間設計:山岸綾
特殊照明:鈴木泰人
造形・演出サポート:カミイケタクヤ 
映像記録:映像ワークショップ