珠洲を語る:アーティスト編

#03 アーティスト Ongoing Collective

#03 アーティスト Ongoing Collective

2017.05.27

三崎地区の小泊保育所。
能登半島の東の端っこ。長手崎灯台から海沿いの道路を挟んだところに建つ保育園だった場所が彼らのスペース。
保育所ならではの部屋群を活用し、10 人の作家がそれぞれの作品を展開します。

珠洲は、ストーリーが生まれそうな場所。

能登半島には、3、4回行ってます。輪島にお寺があって、そこにコミュニティ作ってる集落があって、昔そこにドキュメンタリーを撮りに行きました。お寺を中心に芸術家がいたり、田んぼをやっている人がいたり。そこにいる人が面白くて。何度か行きました、そこに。釣りも好きなので、釣りしたりサザエ取りにも行ってました。馴染みはあったんです。
たまたま珠洲で芸術祭やるって聞いて、北川フラムさんならどうやるのかなあ?って興味が湧いたんですね。こういうところでキャンプや共同生活しながらつくるっていうのも自分たちらしいなと。みんなで行って、みんなで取材して、毎日毎日報告し合って、そこからインスピレーションをもらって。
珠洲は人があまりいないので、歩いてるとちょっと怖いイメージがありました。でもだからこそ、ストーリーが生まれそうな場所とも思ってました。妖怪みたいな話だけではなく、なんでもない家の話とか、物語がそのまま保存されている場所。近代化されてすべてがまっさらになってない。だから怖いということでもあるんですね。いい意味の暗部がある。そこにはいいものがいっぱい埋まっている。
そういう場所だから、きっと作家もインスピレーションを受けそうだと感じたんです。

三崎町寺家にある姫島灯台。灯台の向こうには佐渡島が見えることがあります。
【「わるないわ〜奥能登珠洲 写真と言葉の投稿コンテスト」より 投稿者:izumiさん】

小泊保育所は、僕たちの「口伝資料館」にうってつけ。

「口伝資料館」という企画で作品をつくります。Ongoing Collective(以下Collective)のメンバーの約40名の作家の中からセレクトされた10 人が珠洲の人々から昔話やら個人的な話やら思い出話やら、いろんな話を聞いて。その話にインスピレーションをもらって作品にしていきます。
小泊保育所を選んだのは、ひとつの大きな空間じゃなくて、部屋を回りながらいろんな口伝に触れられるのがいいと思って。あたかも実在する資料館のように、10 の全く違う部屋をつくっていきます。会期中は、現地の子供たちを集めたワークショップをはじめ、保育園スペースを舞台にしたシンポジウムやトークイベントもやりたいので、そのためのスペースも十分にあるところがいい。

小泊保育所内部の様子

地元の人からストーリーをもらい、インスピレーションを受けてアーティストが表現する。
そのプロセスをゆるやかに楽しみたい。

僕たちの作品作りでは「リサーチ」がとても重要な意味をもっています。スタイルを決めない作家たちにとってリサーチで得たものは、制作する際の道標みたいになるものであり、それに対するひとりひとりの自由な解釈と作風が僕たちの作品を面白くしていきます。6月にある現地の草刈りにみんなで参加させてもらって、そこで地元の人たちと作業しながら、また、そのあとの飲み会に参加させてもらいながらたくさん話が聞けたらと思っています。

Collectiveのメンバー、ひとりひとり得意領域が違うのでメンバーごとにいろんなものができるんです。いろいろ聞いてきた話が混ざって新たな作品になってもいい。ひとつ、ものすごくぶっ飛んだ話があったら、みんなでそこから作品をつくってもいい。僕たちのメンバーの中でも作風が固定化されていない、特に臨機応変に対応する人10人を選んでます。みんながどんな変容をとげるのか、そこに興味がある。フラムさんも企画書を見て、どんな作品になるのか想像できないなあって笑ってました。

作風を確立して、お金持ちに買ってもらうようになって、美術館にも注目されるようなって、っていうコンテンポラリーアートの現代の流れにあまり未来を感じていません。いい意味での「いい加減さ」を大切にしたい。"Organic"という言葉を東南アジアのアーティストの人たちがよく使うんだけど、ゆるやかに地元の人たちと時間を共有させてもらう中で、僕たちもいい感じで「ゆるく」集い刺激し合いながら作品ができていくといい。Collectiveの活動も、僕(小川希)がリーダーとか中心とか、決まった形にしてなくて、みんなで集まって「どうする?」って話しながら決めてやってるんです。

Q. 珠洲に「忘れ去られた日本」があるとするとそれは何ですか?

置いてかれたと思っていることの方に未来がある。そういうことってたくさんあります。忘れ去られたものそのものに意味がある、ということですね。自分たちがどんどん近代化していろんなものを捨てていったときに必ず限界がくる。昔の日本にたくさんあったであろう「コレクティブ」な思想、ゆるやかに決めていく感覚や文化は地方にもぎりぎり残っていて、そこに進むべき未来があると感じています。

社会は繰り返す、回転していくものだと思うのですが、全世界的に資本主義の限界が見えている中で、どこに立ち返るのかとなった時にちょっと前に自分たちが捨ててきたものが未来に変わっていく、というのが繰り返されるじゃないのかなあと思います。

今回の僕たちの作品を「資料館」と名付けたのは、口伝として伝わってきたいいものをビジュアル化して後世のひとが資料として見られること
に意味がある、って思ったからです。地元の人たちの口から出たことが、次に生きる人たちの重要な資料になる、というのがコンセプト。消費されてひとつの展覧会で終わるのではなく、しゃべったことが作品化されて、それが資料として生きていく、というサイクルが大切。そこでまた口伝の口伝が発生して、地元の高校生とか小学生の口伝につながる。おじいちゃんの中で眠ってたものが外出しされて若い世代の中で発火するんです。そこには、珠洲がこの先100年、あるいはずっとその先まで大切にすべきものがあると思っています。

Q. 珠洲のおすすめスポットを教えてください。

小泊保育所から見える岬の灯台の感じはいい。
それから「能登さいはて資料館(※)」って面白かったですね。海岸に流れ着いた漂流物とか集めてて。

※能登さいはて資料館
狼煙地区にある狼煙の歴史の資料館。狼煙の民具や伊能忠敬測量隊の加賀能登測量資料、禄剛埼灯台や灯台守のことなどが集められている。

珠洲市狼煙町テ-21
4 月~ 11 月の土曜・日曜に営業
営業時間:10:00〜16:00

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ARTIST PROFILE

Ongoing Collective

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Ongoing Collective
東京の吉祥寺にある芸術複合施設Art Center Ongoing ディレクター小川 希( 写真)の呼びかけによって集まったアーティスト34 名、ミュージシャン1 名、キュレーター6 名、コーディネーター4 名からなる全45 名のアーティスト集団。2016 年結成。