珠洲を語る:アーティスト編

#01 アーティスト 角文平

#01 アーティスト 角文平

2017.05.27

珠洲には神聖な場所のイメージをもっていた。

母が石川県出身で、けっこう福井寄りの、小松空港の方の近くなんですけど、その母親に言わせても奥能登に行く機会ってあんまりないらしいんですよ。能登島とか手前の輪島とかまでは、朝市も有名ですし、そっから先、奥能登まで行くって気合い入れなければいけないというイメージでした。なので、奥能登に実際に行くのは今回が芸術祭で訪ねたのが初めてでした。

神聖な場所っていうか、すごいパワーがある場所っていうイメージがありました。それは、今でこそ道が良くなって陸路で入るのが簡単になったんですけど、その昔はそれもなくて、ほんっとに最涯の地っていうイメージで聞いていいたんです。今は意外と羽田からピューっと飛行機でいけるようになってて驚いたんですが、まあ、同じ北陸でもちょっと違うというか、突端にあるというロケーションとか、福井とはちょっと違うという感じを強くもっていたんです。

地域芸術祭は新潟にももちろんあるんですが、ちょっと離れている。自分にとっては北陸地方でやる初めての大きな芸術祭というのが、自分も参加したいなって思った一番の理由です。高校卒業するまで福井にいて、当時「美術大学は天才が行くとこだ」というイメージがあって進学する発想はなくて、一度普通の大学に進学したんですけど、先のことを考えると行き詰まったというか考え直して、それから独学ではじめて何年か浪人して、東京に出てという感じなんですよね。なので、福井を離れて東京でずっと活動してきたんですけど、なんか自分の故郷のほうでやる機会があればなあっていう思いがあって、去年福井の創作の森っていうところで初めて展示をする機会がありまして、石川は隣りですし、石川のほうでも盛り上がっていけばいいなあって思って参加しました。

暗い室内から海を望む景色は、まさに自分の心にあった北陸のイメージだった

作品の場所に選んだのは、直地区。中心部にも近い場所の倉庫なんですけど。すごい素敵な場所で。まず、外見は古い、海沿いから船がぐーっと入って来れるような大きな倉庫で、海に面して大きく開く開口部があるんですが、中に入って側にパッと振り返ったら、結構倉庫内が暗くって、海側の開口部の先がすぐ海っていうロケーションで、バッと光が入るような感じなんです。それが、北陸のイメージっていう感じがしてて。福井もそうなんですけど、冬は雪囲いで囲うじゃないですか、それで室内は暗くて、それに対して外は白い雪でまぶしい。室内からまぶしい外を見るみたいなところが北陸の見え方っていうか、この見せ方は面白いって感じたんです。

3メートルぐらいある開口部なんですが、そこに立つ人が影になって見える様を見たときに、ここは劇場というか大きな自然のスクリーンにできるなって思ったんです。

珠洲市直地区の倉庫。
珠洲市役所などが建つ珠洲市の中心地、飯田地区からほど近いところに直地区はある。倉庫は、地区の南、南側の海に面した海沿いに建っている。

コンセプトは、海と空からの光をつかった影絵装置

シルエットで見せる作品。そのモチーフが珠洲という場所を象徴するものになろうとしています。いまいまのイメージではそれが6種類あります。
ひとつは交通。昔の船もあるし、漁船もあるし、廃線になった電車、今は飛行機とか。交通手段の変化というのも珠洲の特徴って感じていまして。
2つ目が伝説。やおびくにが箸を刺してできた倒さ杉の話があったり、あと弁慶と義経の話、笛の話とか、大蛸の話とか、民話、伝説をモチーフにしたもの。
それから特産物。カニだったりとか、七輪とか、椿とか、海の幸・山の幸。あとやっぱり塩ですね。揚浜式の塩の存在は別格で、資料館も見に行きました。
それと、祭。キリコをはじめとしたお祭のもろもろ。
最後に、能登独特の風景。見附島とか灯台とか、ゴジラ岩とか、昔からあるものプラス風力発電所のプロペラとか。

時間軸とかあえてごちゃ混ぜにして、動くシルエットを通じて物語が展開されていく感じを表現したいなあ、と。珠洲が歴史的に変わってきた様が、シルエットから考えさせられるものになったらいいと思っています。かなり場所がいい。あれだけ海に直接接した倉庫ってないし、あれだけの開口部をもった倉庫もないですし。自分でもこれらからが楽しみです。

Q. 珠洲に「忘れ去られた日本」があるとするとそれは何ですか?

あえのことに代表されるお祭ごと、ですかね。

僕自身の田舎も結構田舎なんで、結婚式のときに屋根から饅頭まいたり、それをばあちゃんと取りにいったりとか、むかしからずっとやってきたんですよね。でも、そういうものも自分の地元でもなくなってきて、おじいちゃんおばあちゃんになった人たちもめんどくさいからやらないって感じになっていて、本気で守っていこうっていう意識がないと誰もやらない。そんな状況がいろんな市町村で起きていると思うんです。

キリコとかも素敵なんですけど、見えないものに対する畏敬の念みたいなものが一番重要だと思う。それが消えてしまうのはいやだと思います。だんだん簡略化的なことが起きたり、意味のずれていく伝言ゲーム的なことが多い中、結構、若い人まで未だにちゃんと続いている凄さを感じます。僕らの親の世代、段階の世代が会社勤めをし始めて街にでるようになって街に伝わるものから遠ざかる流れがあったのかもと思います。逆に共働きでおばあちゃんに育てられた孫世代はおばあちゃん世代からいろいろ話をきかされて違った思い入れが生まれている、ということもあると思います。

Q. 珠洲のおすすめスポットを教えてください。

内浦よりも外がおすすめ、キャンプ場のあたり、海沿いの民家。

珠洲の良さはなかなか言語化がしにくくて、行けばわかる、でも行ってみないとわからない。だからぜひ一度、行ってみてほしいです。

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ARTIST PROFILE

角文平

角文平

角文平
1978 年福井生まれ。2002 年武蔵野美術大学造形学部工芸工業デザイン学科金工専攻卒業。東京在住。
日常的に見慣れたものを組み合わせることで本来のものが持つ機能や意味をずらし、新たな意味を見る側に連想させるような彫刻を制作。近年は空き家や学校の教室を使ったプロジェクトを経て、作品周辺の空間を作品の一部として取り込むようなインスタレーションも展開。