最涯珠洲を語る

#02 アーティスト キジマ真紀

#02 アーティスト キジマ真紀

2017.05.27

キジマ真紀

キジマ真紀

キジマ真紀
「現実と空想」をテーマに、日用品などの品々を繊細な手作業によって植物やドレスに変貌させる作品を制作している。2009年、2012年、2015年「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」、2013年には、横浜赤レンガ倉庫前に設置されたアートリング「Art Rink」のアートプロデュース、2014年には、市原湖畔美術館にてワークショップを実施するなど、幅広く展開。

海の道と山の道がぶつかる場所に
珠洲のいろいろな人たちの
海の記憶と山の記憶が交わる場所をつくる。
珠洲の人たちと一緒につくる。

珠洲市日置地区の旧日置小学校。
珠洲市役所のある飯田地区から山越えの道を超え、海側の道に降りていく高台に旧日置小学校は建っています。能登半島の北端にも近く、見晴らしのいい校舎からは、大陸に向かって広がる日本海が臨めます。

海と山が近い距離感で存在するその力強さ、そこに魅力を感じました。

珠洲に初めて伺った時は、海の力強さと、それでも山が近くにあるという、その距離感というか力強さに魅力を感じました。じわじわと来る強さというか。私自身は東京で育って茨城や埼玉などでも暮らしましたが、都市の郊外とは違う、自然がダイレクトに暮らしのそばにあるというのが印象的でした。珠洲に暮らす皆さんが日々見てきた海や山の表情、そこから生まれてきた知恵や豊かさなどを、ぜひ聞かせて欲しいと思いました。

それと、珠洲はお魚が本当に美味しくて。旅館でいただいたごはんがどれもとっても美味しかった。おすましに入っている海藻も美味しい。食がこんなに魅力的なんだ、と感じました。
珠洲の海をのぞむ高台からの半島景色

かつての小学校にひらめくフラッグ「海と山のスズびらき」のしるし

この芸術祭では、珠洲市日置地区にある廃校になった旧日置小学校の中庭に作品を展開します。そこは場所的には、海の道と山の道がちょうど交わる場所。交通の便が限られていた時代には山と海の人々を繋ぐ場所だったんです。

初めて見た中庭には、遊具とかがあったんだろうなという雰囲気や、こどもたちがここで遊んでいたんじゃないかな?という名残を感じました。ちょっとした憩いの場という雰囲気がありましたね。その中庭で、珠洲に住む人たちの海や山の記憶が現れたフラッグが、海開きや山開きの印じゃないけど「はじまりますよ」とひらめいていたら素敵なんじゃないかと。廃校になった中学校が、日置に暮らす人々と日置を訪れた人々を繋ぐ交流の場所として生まれ変わる。そんなことを目指します。

旧日置小学校は芸術祭のサポーターさんたちが泊まる施設にもなると聞いています。珠洲の人もそうでない人もいろんな人が来る場所ですので、交流のきっかけにもなればいいなと思いますね。
旧日置小学校小学校視察時の内部の様子

珠洲の人たちと体験したい「人間だれしもアーティスト」という楽しさ

珠洲に住む人たちの、海にまつわる記憶や、山にまつわる記憶をひらくプロジェクトです。地元の方々とワークショップを行って一人1枚フラッグを作っていただきます。できれば100枚以上を目指していて。できるだけ多くの人に携わっていただけたら嬉しいですね。手芸の好きなおばあちゃんが3枚も4枚も作ってくださったりして。小学校や老人ホームの人たち、この小学校を卒業した方とかにも協力してもらえたらいいですね。そうやっていろいろな方が来て作ってくれることで、交流の場として展示の意味が膨らむと思っています。

以前、初めて新潟県十日町市の「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」に参加して越後妻有という地域に出会った時、地元集落のみなさんとコミュニケーションをとりながら作品を作ることを初めて体験しました。その時は難しさも感じましたが、みなさんがすごく協力的で、励まされたというか、自分がただ絵を描くだけでは得られなかった楽しさや、自分がものを作っている意味を見出せた時間だったんです。今年の春、千葉県市原市で開催された「いちはらアート×ミックス」でも、地元の方とワークショップを繰り返して再生の象徴である蝶を1000頭刺繍して教室に飛ばそうってみなさんと頑張ったら、蝶が1300頭にもなったんです。

作品の円周を10メートルにしようかと。ひとつひとつの旗の大きさは当初大きいものを想定していたんですけど、こどもやお年寄りが作りやすいよう学校の机の大きさにしようかと思っています。それを二段にして。内側を山、外側を海、をイメージしたフラッグにしようと思っています。材料の布は私が用意したものと、参加者のご自宅にある古布などを持ち寄って頂き、皆でシェアできたらと思います。

うまく言えないんですけど…決して、美術の勉強をしてきたからすごいものが作れるってことではなくて。海の暮らしとか山の暮らしをしている人も、ものすごいアイディアを持っていたり、自分なんかよりもものぐすごく手先が器用だったりする。針仕事が得意なおばあちゃんたちも多い。そういう方たちが生み出すものって、すごく魅力的で。
人間だれしもアーティストじゃないけども、すごく、そういうものを一緒に楽しみたいですね。珠洲の人たちにも「身近な素材でこんなものが私たちから生まれるんだ」という体験をしてもらえたら、と。自分もそれをうまく引き出せたらと思います。

Q. 珠洲に「忘れ去られた日本」があるとするとそれは何ですか?

瓦がすごいですよね。ちょっと高台から見ると、海の景色に対して家々の瓦屋根がきれいにこう、なんていうか。バラバラしてなくて、統一されてて。なんだろう、と。すっごい綺麗で、素敵だと思います。

Q. 珠洲のおすすめスポットを教えてください。

ちょっと気になったのが、船小屋がある場所(※)。あそこすごい面白くって。海水浴としても穴場って聞いて、あそこ好きだなと思いました。

※船小屋がある場所
半島東岸。金剛崎のちょっと南にある寺家上野というバス停を降り、横道から浜に出ると、船小屋の並んだ入江にでます。そこだけ時間が止まっているかのような不思議な場所です。
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